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上山道郎 (うえやま みちろう)

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別冊兄弟拳blog
漫画家・上山道郎のラクガキや近況報告
回答




先日の日記にコメントの形でどうやら人生相談的な質問をいただきました。
かなり真剣な相談のように思えるので
このように記事の形で返信したいとおもいます。


************************

上山先生
お聞きしたいことがあります.よろしければぜひお答えをお聞かせください.
先生は普段からとても楽しそうに仕事をなさっているように思います.
「趣味で好きなことでも仕事にすると大変だ(ときに嫌いになる)」
とよく聞きます.
この日記を読むと,やはり楽しいことばかりではないのだろうと感じられるのですが,先生は仕事のどんなときがつらいですか?
やはり絵を描くこと自体がつらくなることもあるのでしょうか.

自分は今大学院の一年生で,今後の進路をどうしようかと思い悩んでいる日々です.
ちなみに,まんが道を読んでいるので,漫画家の苦労は,少しはわかっていると思います.

よろしくお願いします.


************************


 ちょっと質問の意図するポイントが散漫な感じで困るのですが…
まずは聞かれたことから答えていこうと思います。

*なお、以下の内容はあくまで上山個人のについてのことであって
他の漫画家もみんなそう思っていると言うことではないことを断っておきます*


 仕事のどんなときがつらいかという質問ですが
まず、仕事をする=漫画を描く事それ自体がつらいという経験は今のところありません。
描くこと自体が、体調が悪かったり作業内容が多かったり諸般の事情で描きたい内容が描けなかったりして「大変だ」と思うことはありますが、
漫画を描くことを「もうやめたい」と思うほどつらかったという記憶はありません。

結局、つらいことといえばなによりも「漫画を描けない状態」におちいることです。


 「趣味で好きなことでも仕事にすると大変だ(ときに嫌いになる)」
ということについてですが
俺自身も漫画家になろうとしてがんばっていたときには
「自分の一番好きなことは趣味にとどめておくべきだ。
仕事にしてそれに行き詰まったら、一番の楽しみを失うことになるから」
といった忠告をだれかに言われたことがあります。

しかしこれはひとつの事実を言い表してはいますが
絶対の真実を表しているものではありません。

まず、どんなことでも「仕事」というものは大変なものです。
他人様からお金をもらってする仕事がラクチンなもののわけがありません。
自分の好きなことだろうと嫌いなことだろうとそれは同じです。

それなら、嫌いなことよりは好きなことをして大変な方がいいんじゃないか?
と俺は思います。
少なくとも仕事自体が楽しければ、大変なことを乗り越える気持ちがわきやすいでしょう。


 なによりも「一番好きなこと」ならば、ちょっと大変な目にあったくらいで嫌いになったりはしません。
はっきりいえば、嫌いになるくらいのことならそれははじめから大して好きではなかったのでしょう。

俺の知っている、長年第一線で漫画を描き続けている漫画家という人は
「好きだから」「仕事だから」描いている、そんな生半可なものではありません。
「描かずにいられない」から描いているのです。
これはもう呪いのようなもので、描くことから離れられない・描くことでしか生きられないのです。
漫画に限ったことではありません。
第一線のプロであり続ける人達というものは
歌手ならば「歌わずにはいられない」
ダンサーならば「踊らずにはいられない」
画家ならば「絵を描かずにはいられない」
そういうものなのです。

羽生善治にとって将棋が
イチローにとって野球が
ロナウジーニョにとってサッカーが
一番好きなことではない、なんてことはありえません。

「好きなことは趣味にしておけ」などというのは
俺に言わせればなにかを本気で好きになったことなどない人の言葉でしょう。


 とはいっても、これは「世の中にはそういう人もいる」ということであって
「好きなことを仕事にする人はえらくてそれ以外はダメな人」
ということではありません。
どうがんばっても収入にならない趣味を「一番好き」な人もいるし
これといって好きなことなどないという人も当然いるわけです。
それは本当に人それぞれであって、良い悪いの問題ではありません。



 結局のところ、好きなことを仕事にするかどうかは
自分自身でその決断に責任を持てるかどうか、と言うことだと思います。

映画「耳をすませば」で、小説家を目指す主人公・雫に対してお父さんが言う
「人と違う道はそれなりにしんどいぞ。なにがあっても誰のせいにもできないからな」
というセリフがあるのですが
おれはこの言葉が大好きです。

成功しても失敗しても、それを他人のせいにしなくてすむ。
それはきっと自分自身の人生を生きるということにつながると思うし、
そういう生き方をしたいと俺は思うからです。
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この記事に対するコメント
感想
上山先生の意見はとても参考になりました。
僕はまだ高校生で、今度18になります。
僕は中学の頃から小説が好きで、自分で書くようになり、いつか自分の書いた話が誰かに読まれて、その人の人生の糧となればいいなと思うようになりました。

けれど、両親ともに僕のそんな願いを
「そんなこと」
で片付けて、ずっと僕が小説を書くことに時間を割くことを良しとしませんでした。

親としてはやっぱり、不安定でなれるかどうかも分からない小説家に、子どもがなろうとするのは心配なのだろうと思います。
それからしばらくはずっと押さえつけられていて、両親からは隠れるように小説を書いていましたが、
先生のこの回答を読んで、もう少し親とも向き合ってちゃんと話してみようと思いました。

僕も結局は書きたいから書いてるんですよね。
思い立ったらどうしても書いてしまうんです。
小説を書けないでいた時期がとても辛かったのを覚えています。

いつか僕も第一線に立てるようになりたいと思います。

本当にありがとうございました。
【2007/04/07 12:54】 URL | リク #- [ 編集]

管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
【2007/04/11 20:01】 | # [ 編集]

ありがとうございました.
ご回答本当にありがとうございます.

上山先生から熱いお言葉をいただけてとてもうれしく,
その熱さに応える言葉はないものかといろいろと考えたのですが,
そう簡単には悩みは解決しそうにないです.
これからもいろいろと悩んでいくと思いますが,
先生の言葉をヒントにしていけそうです.
うまく言葉にできたときに,どこかに記事に小さくコメントをさせていただきます.

散漫な質問にも関わらず,丁寧にお答えいただいて,ありがとうございました.


*****************


リクさんへ

小説を書いているとのことで,親近感が湧いたのでコメントさせていただきます.

自分の専門は機械工学(主にロボット)ですが,趣味で小説を書いています.
(機械工学を選んだこと自体は後悔していないので,小説を趣味にしたことは今回の悩み相談とは関係ないです.)

小説を書くことにはまったのは,「Q書房」という文芸サイトを通じて多くの人と知り合えたからです.
Q書房は,定期的に小説を募集して,投票形式で小説の勝ち負けを決める文芸バトルサイトです.
それだけでなく,批評をしあったりする場も用意されているので,とても勉強になります.
Q書房に限らず,こういった文芸サイトは増えてきているようですので,
どこかに参加してみたらいかがでしょうか.

もちろん,親との相談も大切だと思います.
頑張ってください.


Began
【2007/04/16 00:44】 URL | Began #Mc6mSaaw [ 編集]


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